Taylor Roomの写真

たまたま立ち寄った楽器店。そこには、アジアで唯一のTaylor Roomがあったのだった…!

[2016.1.15UP]

最近、Instagramを始めた。そこで世界中の、本当に多くのギタリストが手にしているのを見かけるのがテイラーのギターだ。もちろん以前から知ってはいる。むしろ気になっていた。アンプを通した時に自然なサウンドが広がることも。ただ、マーティンやギブソンをはじめ、多くの魅力的なギターの中で手つかずの存在ではあった。

「ここはアジアで唯一のテイラー・ルームなんです。」

と爽やかな笑顔の隠塚さん。ロックイン新宿の若きギター・コンシェルジュだ。

そう、思い返せば年の瀬。たまたま立ち寄った「ロックイン新宿」で思いがけずテイラーの魅力に触れワクワクし、その哲学にも興味を持った。そして本日はあらためて取材にお邪魔しているのだ。

テイラールームの風景
大きなロゴ下にFIND YOUR FITと書かれている。

実は、ここのテイラーにはプライスタグがついていない。なぜだろう…?

まずは音でギターを選んでいただきたいということと、プライスを気にせずどんどん試奏してもらいたい、というのがテイラーの考え方なのです」

おお、なるほど素晴らしい。もちろん自信の表れでもあるだろう。それではと、何気なく1本のギターをぽろーんとしてみると…

んっ、チューニング合っている?!しかも抜群にジャストで。ちょっとビックリしていると、すかさず隠塚さん。

「実はすべてチューニングした状態で展示しているんです!」

試しに他のテイラーも、ぽろーん、ぽろーん。確かにすべて合っている!

テイラーの壁・左サイド
左の列、すべてチューニングが合っている!
テイラーの壁・右サイド
右の列、すべてチューニングが合っている!

どうやら世界中での使用を前提としているテイラーでは、とても苛酷な状況で木材のシーズニングをしているそうだ。万一のネックトラブルもトラスロッドでの調整はもちろん、NTネック・ジョイントという独自の接合方法により、ネック角度の微調整も可能なのだ。だから、工場出荷時からジャスト・チューニング!

アンディ・パワーズ気合の800シリーズ

さて、ここで一昨年に大幅な見直しがされた800シリーズに触れさせていただいた。ボブ・テイラー本人から後継者として迎えられ、あの秀逸なピックアップを作り上げたデヴィッド・ホスラーが完全なる信頼を置く若きマスター・ビルダー、アンディ・パワーズがリニューアルしたシリーズだ。サイド&バックにはローズウッドが使用され、新開発のES2が採用されている(ピックアップ搭載モデルが対象)。

まずはオールマイティなプレイが可能な814ceから弾いてみる。

テイラー814ce
800シリーズでは基本ともいえる814ce

そうテイラーには、概ね5つのボディ・シェイプが用意されているが、さらにトーンウッドとの兼ね合いにより、木材の厚み、ブレイシング、塗装などが最適化されている。要は各機種ごとにディテールが異なるのだ。これはラインでの仕事となると、相当に難易度が高いように思えるが、それをこなしているのがテイラー躍進の理由のひとつだろう。

指で弾いてみると、まずはバランスの良さに驚く。それは単に1弦~6弦がばーんとバランス良く鳴るということだけではなく、例えば低音弦を鳴らしながら1弦12フレット付近でソロを弾いても埋もれない、そういった可能性が広がるバランス感だ。

「実はこのモデルには、アンディ・パワーズとエリクサーが共同開発したHD Lightという特別なパッケージが張られているんです」

なるほど。小さめのギターだとどうしても高音弦のテンションが弱くなる。だからといって、ミディアム・ゲージを全弦に張るとギターに余分な負担をかけてしまう。それで1弦~3弦のみに013、017、025と太めのゲージが張られているそうだ。

隠塚さんがアンプのスイッチを入れた。

おっ、これがES2。実に自然な増幅。いわゆるピエゾ臭さはまったく感じられない。これだけ違和感がないと、本当に好みの原音を選ぶことが大切になるだろう。だからほぼ全機種が揃っているテイラー・ルームなのか、と、自分なりに納得する。

なお、このギターではブレイシングを斜めにすることで低音が出やすくしているそうだ。

続いていちばん大きいシェイプの818eを体験!

次に大きめシェイプの818eも弾かせていただいた。“グランド・オーケストラ” 、名前もビックだ。そして、今、レポートを書いていても思う。

ああ、これが自分にはぴったり。

これが欲しい!

テイラー818e
見た目以上のポテンシャルを感じた818e

あくまで個人的な印象だが、大きいからといって低音だけが強調されるわけでなく、高音もしっかり豊かに鳴る。パワフルだけど味わい深い。心に響く。しかも大きさを感じさせない弾きやすさ。俄然テンションが上がる。

「はい、好みに合わせて選んでいただければ、それこそがこのテイラー・ルームの役割です!」と、こちらも軽くテンション上がり気味の隠塚氏。後で見たカタログにはこうあった。「テイラーで最大かつ最も複雑なサウンド」。こんな表現見たことない(笑)。いずれにしても良いギター体験に感謝。でもまだ続きがあったのだ。

メイプルの個性を見事に昇華させ、豊かなサウンドを生み出す600シリーズへ。

2015年、アンディ・パワーズにより再設計された600シリーズ。サイドとバックにはメイプル材が使われている。メイプルといえば、ギブソンのJ200やDOVE。独特の歯切れの良さや明るさなどがウリだが、一方でその個性から好き嫌いが分かれるトーンウッドの一つだ。

そのメイプル。実は北米原産が多い。そのため適切な管理を行えば何世紀にもわたって環境にやさしい供給がされるとのこと。

環境保護を最重要とも捉えるテイラー社ではその点に着目。アコギではローズウッドやマホガニーが好まれる状況に、あえてメイプルで挑戦。そしてアンディ・パワーズの手により、良い意味で今までのメイプル材らしからぬトーンを生み出したのだ。

さて前置きはこのくらいにして、比較のためにと、軽い気持ちで614ceを弾かせていただいた。

テイラー614ce
ボディシェイプは814ceと同じだが、メイプル材に合わせて最適化されている。

おっ、これは…ハリもあるし、柔らかい部分もある。どちらかというとローズウッドに近いサウンドなのだが、メイプル本来の良さも残っている。なんというか今までにないような素晴らしいサウンドかも…!

「トレファクション加工の効果も大きいと思います。材を焙煎することで何十年もかかる木の変化を作り出して、最初から鳴るようにしているんです」と、隠塚さん。

トレファクション加工。きっと、革新的な技術に違いない。最初からライク・ヴィンテージなのだから。トップのダークな艶もトレファクション効果なのだろう、いい感じに枯れている。いずれにしてもこれもぜひ欲しい1本。バックも良い雰囲気!

テイラー614ecの背面-1
まるでバイオリンのような美しさ。あまりの艶にいろいろ写り込んでいるけど。

 

テイラー614ecの背面-2
テイラーが作り出した特別なステイン加工によりメイプルがここまでヴィンテージ調に。

さて、この他にもトラベルギターやコア材を使ったモデルなど、幾つかのテイラーの試奏させていただいた。その上で感じることは、どのギターにも明確なサウンドの特徴があり、テイラーが単純にたくさんのシリーズと機種を作っているのではない、ということ。それは本当に感じた。もし、これぞという1本を選ぶのなら丸一日、いや何度も通うことになるかもしれない。もちろん一発で気に入る場合もあるだろう(自分はそのタイプ)。

いずれにしても、なぜ世界中のみんながテイラーを持っているのか、わかった気がした。

(取材 望月成恭)

 

山野楽器 ロックイン新宿の隠塚望さん
本日のギター・コンシェルジュの隠塚望(おんづかのぞみ)さん。的確なアドバイスでテイラーの魅力が良くわかりました。気軽に訪ねてみましょう!
Taylorの冊子「Wood&Steel」
カタログ冊子「Wood&Steel」。テイラーのことが良くわかる。ぜひ楽器店で手に入れよう。

 

[所在地]
山野楽器 ロックイン新宿
〒160-0022 東京都新宿区新宿3-35-16
TEL :03-5269-0795
WEB(テイラー・ギターズ): http://www.taylorguitars.jp/
WEB(テイラー・ルーム):http://www.yamano-music.co.jp/a/shops/rockinn_shinjuku/Taylor_Room
営業時間:11:30~21:00(日・祝日のみ11:00~20:00)
アクセス:JR「新宿」駅 東南口より徒歩3分。駐車場は周辺のコインパーキング等をご利用ください。

※ここに紹介したギターは、在庫商品の一例として2016年1月8日時点の情報で作成されています。